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公正証書遺言が無効になるケースとは?

遺言書は、遺産相続において相続に関する自己の意思を残し、相続に反映させる重要な文書です。

その中でも、公正証書遺言は公証人が作成するため、無効になるリスクが低いといわれています。

しかし、公正証書遺言であっても絶対に無効にならないわけではありません。

実際には、公正証書遺言が無効と判断されたケースも存在します。

そこで、本記事では、公正証書遺言が無効になる主なケースと、その理由について詳しく解説します。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言書です。

遺言者が公証人に対し遺言内容を口述し、それを基に公証人が遺言書を作成します。

公正証書遺言は、自筆証書遺言や秘密証書遺言と異なり、公証人が内容の作成に関与するため、法律で定められた書き方(形式的要件)についてのミスが少なく、法的に無効になるリスクが低い遺言です。

また、公正証書遺言は、原本が公証役場に保管されるため、破棄、隠とく、紛失、改ざんの可能性がほとんどなく、安全性も高くなっています。

さらに、公正証書遺言の作成には2名以上の証人が立ち会う必要があるため、適切な手続きを経て作成されたことが証明されやすい遺言であるといえます。

こうした特徴から、公正証書遺言は、自筆証書遺言や秘密証書遺言と比べて、遺言が無効になるリスクが低くなっています。

公正証書遺言が無効になる主なケース

公正証書遺言が無効となる主なケースは以下のとおりです。

遺言能力が欠けている場合

公正証書遺言が無効になる主なケースの一つ目は、遺言能力が欠けている場合です。

遺言を作成するには、遺言能力が必要です。

遺言能力とは、遺言内容を理解したうえで、自分の意思で遺言書を作成することができる能力のことです。

たとえば、遺言作成時に認知症が進行しており、判断能力がなかった場合や精神的な疾患により自らの意思を正しく表明できなかった場合には、遺言能力が認められない可能性があります。

公証人は遺言者の判断能力を確認しますが、専門的な検査ができる医師ではないため、遺言書の作成後、家族等から「遺言者は、遺言書作成の当時に判断能力がなかったため、遺言は無効だ。」として異議が出されるケースもあります。

判断能力に疑問がある場合は、事前に医師の診断書を用意することをおすすめします。

また、民法上、遺言は15歳以上にならないとできないとされているため、15歳未満の遺言は遺言能力がないとして、無効となります。

強迫や詐欺があった場合

公正証書遺言が無効になる主なケースの二つ目は、強迫や詐欺があった場合です。

遺言が作成される過程で、遺言者が第三者から脅されたり、騙されたりしていた場合、その遺言は無効となります。

たとえば、相続人の一人が遺言者を脅迫し、自分に有利な内容の遺言書を作成させた場合や嘘の情報を伝え、遺言内容を誘導した場合は無効となる可能性があります。

遺言は遺言者の自由な意思に基づいて作成されるべきであるため、外部からの不正な影響が認められた場合、その遺言は無効となります。

法律で定められた形式を守っていない場合

公正証書遺言が無効になる主なケースの三つ目は、公正証書遺言が法律で定められた形式を守っていない場合です。

公正証書遺言は法律で定められた形式に基づいて作成される必要があります。

したがって、形式的な不備がある場合、遺言が無効となる可能性があります。

無効となる可能性のある具体例としては、公証人が遺言者から口述された内容を正しく記録していなかった場合や、遺言者が公証人の作成した遺言書案の内容を確認せずに署名押印した場合などがあげられます。

このケースは、公証人の職務怠慢が原因となることもありますが、最終的には遺言者や証人が遺言書案の内容をしっかり確認することが大切です。

公序良俗に反する内容が含まれている場合

公正証書遺言が無効になる主なケースの四つ目は、遺言に公序良俗に反する内容が含まれている場合です。

遺言内容が公序良俗に反する場合、その部分が無効となる可能性があります。

無効となる可能性がある具体例としては、愛人との関係継続を図るために愛人に全財産を遺贈する内容の遺言書を作成する場合や、犯罪行為の資金とすることを条件として遺贈する内容の遺言書を作成する場合などがあげられます。

証人に適格性がない場合

公正証書遺言が無効になる主なケースの五つ目は、証人に適格性がない場合です。

公正証書遺言の証人になれない人として、民法第974条(証人及び立会人の欠格事由)が定められており、この欠格事由に該当しないよう注意する必要があります。

証人として不適格な人が立ち会っていた場合、遺言の効力に問題が生じる可能性があります。

証人として不適格な人の例としては、推定相続人や受遺者及びその配偶者や直系血族、未成年者などがあげられます。

適格性を欠く証人が立ち会った場合、遺言全体が無効となるリスクがあるため、証人の選定は慎重に行う必要があります。

まとめ

本記事では、公正証書遺言が無効になるケースを解説しました。

公正証書遺言は、他の遺言書に比べて安全性の高い形式ですが、それでも無効になるリスクがあります。

無効となることを防ぐためには、法律に基づいた形式を守ることはもちろん、遺言者の判断能力が十分にあるうちに作成すること、遺言者自身の意思で遺言書を作成すること、遺言書の内容に問題がないことに十分注意する必要があります。

遺言を作成する際は、こうした様々なリスクも考慮しながら手続を進める必要があるため、少しでも不安がある場合には、専門家である司法書士に相談すると良いでしょう。

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