不動産の名義変更は自分でできる?手続きの方法と注意点
不動産の名義変更は、相続や贈与、売買など様々な理由で必要になります。
自分で手続きすることは可能ですが、手続きが複雑なため注意が必要です。
この記事では、不動産の名義変更をする方法とその注意点について解説します。
不動産の名義変更は法務局で行う
不動産の名義変更は、不動産の所有者が亡くなって相続したとき、不動産をあげたりもらったり、売ったり買ったりしたときなど、不動産の所有権が移った際に必要になる手続きで、法務局で行います。
不動産の所有者や所在地、面積などの情報は、「登記事項証明書」という証明書に記載されており、法務局でこの証明書を発行してもらうことで確認することができます。
名義変更の手続き方法
それでは、具体的な手続きの方法について、大きく3つに分けて説明します。
1.必要書類を揃える
2.登記申請書を作成する
3.管轄の法務局へ提出する
1.必要書類を揃える
必要書類は相続や贈与、売買など、名義変更が必要な理由により異なりますが、以下の書類が必要になることが一般的です。
また、必要書類は原則として原本を提出する必要があります。
ちなみに、一部の書類については、原本還付を希望する旨を示してコピーを提出することで、原本を返却してもらうことが可能です。
・登記原因証明情報
・登記識別情報(登記済権利証)
・印鑑証明書
・住民票
・固定資産評価証明書
・登録免許税相当額の収入印紙
登記原因証明情報
登記原因証明情報とは、名義変更の原因や理由を証明する書類のことです。
不動産を相続で取得した場合は、戸籍謄本・遺産分割協議書・印鑑証明書など、贈与による場合は贈与契約書など、売買による場合は売買契約書などを用意します。
ちなみに、契約書を提出せずに、名義変更の原因や理由を明記した報告形式の書類に当事者が署名押印したものを代わりに提出することも可能です。
登記識別情報通知書(登記済権利証)
登記識別情報通知書とは、不動産を取得した際に法務局から発行される書類で、アラビア数字、その他の符号の組合せからなる12桁の符号(パスワード)が記載されています。
平成17年に不動産登記法が改正され、登記済権利証に代えて発行されるようになった、いわゆる「権利書」と呼ばれる書類です。
名義変更の際に提出した登記識別情報通知書は、パスワードの漏えいを防ぐため、登記の完了後に廃棄処分されます。そのため、名義変更の際に登記識別情報を提出する場合は、登記識別情報通知書の原本を提出するのではなく、そのコピーを提出することが一般的です。
印鑑証明書
贈与や売買などの理由で不動産の名義変更をする場合、現在の名義人の印鑑証明書を提出する必要があります。
大切な財産である不動産の名義を変更するにあたっては、現在の名義人は認印ではなく実印で押印することが必要だからです。
ちなみに、印鑑証明書には有効期限があります。具体的には、名義変更の登記申請を法務局に行う時点で、発行後3か月以内のものを提出する必要があるので、期限切れのものを提出しないよう注意が必要です。
住民票
不動産の名義変更をする場合、新たな名義人の住所と氏名が登記されて、登記事項証明書に所有者として記載されるため、新たな名義人の住所を証明する書類が必要になります。
具体的には住民票の他、戸籍の附票の写し、住所が記載された印鑑証明書を用いることもできます。
ちなみに、法人の場合は、履歴事項全部証明書などを提出することになります。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書とは、不動産の所有者や所在地、固定資産評価額などを証明する書類で、登録免許税額を算出するために必要となります。
ちなみに、固定資産評価証明書は、名義変更の登記申請を法務局に行う時点で、最新年度のものを提出する必要があるので注意が必要です。
なお、固定資産評価証明書は、その不動産が所在する市区町村役場で手数料を支払って取得することができますが、この証明書の代わりとして、毎年4月~5月頃に所有者へ郵送される固定資産税の課税明細書を利用することも可能です。
登録免許税相当額の収入印紙
名義変更の手続きをする場合、登録免許税という税金を納付する必要があります。
そして、登録免許税の金額は、登録免許税法や租税特別措置法などの法令に基づいて算出する必要があります。正確な算出方法の説明は複雑になるため割愛しますが、わかりやすく簡略化すると、名義変更の原因ごとに定められた税率を、不動産の固定資産評価額にかけることで算出することになります。
また、その納付方法としては、収入印紙を登記申請書に貼り付けて納付することが一般的です。
他には、銀行などで登録免許税相当額を納付したうえで、その領収証書を登記申請書に貼り付けて提出する方法を選ぶことも可能です。
2.登記申請書を作成する
申請書の様式は、法務局のホームページからダウンロードすることができます。
相続や贈与、売買などケース別に用意されている他、記載例も用意されているので、あわせて確認してみましょう。
申請書にはA4サイズの用紙を使用し、上質紙など長期間保存が可能な紙質のものを用意して必要書類と共に左とじにします。
文字はパソコンやワープロを使用して直接入力する他、黒色インク、黒色ボールペンなどを使用してはっきりと書きます。
鉛筆、または摩擦等により消えたり見えなくなったりする筆記具は使用できません。
3.管轄の法務局へ提出する
登記申請書に必要書類を添付したら、その不動産の所在地を管轄する法務局へ提出します。
郵送による申請の場合、申請書を入れた封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載して書留郵便で送付します。
登記完了時に発行される登記完了証や原本還付を希望する書類について、郵送による返却を希望する場合は、宛名を記載した返信用封筒と書留郵便のための切手を同封する必要があります。
ちなみに、発送・返送時の封筒は、レターパックプラスを使用することも可能です。
自分で名義変更する際の注意点
上述したように、不動産の名義変更には多くの書類が必要になります。
書類に漏れがあったり、不備があったりすると申請が受理されず、何度もやり直しや修正対応のために法務局へ出向かないといけなくなる可能性があるため注意が必要です。
また、申請の際に必要な登録免許税は、法令に基づいて正確な税額を計算する必要がありますし、税金の軽減特例を受けることができる場合には、適用を受け忘れないように注意が必要です。
まとめ
不動産の名義変更は自分で手続きすることも可能ですが、大切な財産を扱う手続であるため、必要な書類や注意点が多く、手続きも複雑です。
名義変更の手続きのためには、1.必要書類を不備なく揃えること、2.登記申請書を作成すること、3.法務局へ書類を提出することが必要になりますが、いずれも不慣れな方が多いかと思います。
こうした名義変更の手続きは、専門家である司法書士に依頼して、代わりに手続きをしてもらうことも可能です。
人生に数回しか関わることのない不慣れな手続きに、多くの手間と時間をかけたくないと思ったときには、一度司法書士に相談してみても良いかもしれませんね。