相続手続とその流れについて
ご家族が亡くなると、悲しむ間もなく相続の手続を進めなければならなくなります。
この記事では、相続発生後に行うべき手続とその進め方を、「何から手をつけたらいいのか分からない…」といった方にもわかりやすく解説します。
相続手続とは?
相続手続とは、亡くなった方(被相続人)が遺した財産や負債を、法律に基づいた権利を持つ人(相続人)が引き継ぐために必要な一連の手続を指します。
亡くなった方の名義のままでは、預貯金を引き出したり、自宅を売却したりすることはできません。
こうしたことを行うためには、法的に正しい手順を踏んで、相続手続を行う必要があります。
ここで注意したいのは、相続財産にはプラスのものだけでなく、マイナスのものも含まれるという点です。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 預貯金(普通預金、定期預金など)
- 不動産(土地、建物、田、畑、山林、借地権など)
- 株式・投資信託(銀行や証券会社の口座で保有しているものなど)
- 現金、貴金属、自動車、家財道具
- 借金・ローン(消費者金融からの借り入れ、住宅ローンの残債など)
- 未払金(医療費、公共料金、未納の税金など)
- 被相続人の契約関係(連帯保証、賃貸契約、公共料金や電話などの利用契約)
被相続人に多額の借金があった場合、それを知らずに相続手続を進めてしまうと、相続人がその負債を背負うことになってしまいます。
そのため、どのような財産がどれくらいあるのかを正確に把握することが、相続の第一歩となります。
相続手続の全体の流れ
相続手続は、法律上の優先順位や期限を守りながら、正しい順番で進めていく必要があります。
ここでは時系列に沿って、具体的な流れをみていきましょう。
①遺言書の有無を確認
相続手続で最初に行うべきことは、亡くなった方が遺言書を遺しているかどうかの確認です。
遺言書がある場合は、原則としてその内容が優先されるため、その後の手続が大きく変わります。
■自筆証書遺言がある場合
被相続人が自筆で書いた遺言書が見つかった場合、勝手に開封してはいけません。
家庭裁判所で検認という手続きを経てからでないと、その遺言書を使った相続手続を進めることができない決まりになっています。
なお、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は、家庭裁判所での検認手続は不要ですが、代わりに法務局での「遺言書情報証明書の交付請求手続」を行う必要がありますので、注意が必要です。
■公正証書遺言がある場合
公証役場で作成された遺言書です。
原本が公証役場に保管されているため、偽造や紛失の心配がありません。
家庭裁判所での検認も不要で、そのまま金融機関や法務局での相続手続に使用することができます。
■遺言書がない場合
この場合は、法律で定められた相続人(法定相続人)全員で話し合いを行い、相続人全員の合意によって、誰がどの財産をどれだけ引き継ぐかを決めること(遺産分割協議)が必要になります。
②相続人の調査(戸籍の収集)
法律上の相続人が誰であるかを公的に証明するためには、戸籍謄本を収集する必要があります。
金融機関や法務局は、客観的な証拠である戸籍謄本が揃わなければ手続を受理してくれません。
一般的には、以下の書類が必要になります。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
ちなみに、被相続人や相続人が結婚や離婚、養子縁組や離縁をしたり、戸籍の筆頭者が交代したり、転籍したり、戸籍の様式変更(改製)が行われたり等する度に、取り寄せるべき戸籍謄本が増えることになります。
こうしたことを繰り返している場合は、取り寄せるべき戸籍謄本が膨大になるため、この作業だけで数ヶ月を要することも珍しくありません。
③相続財産の調査
被相続人が遺したプラスの財産とマイナスの財産を調べていきます。
プラスの財産の相続手続が終わってから、多額の借金が見つかり、借金の支払いを求められたといったトラブルを防ぐため、この段階で漏れなく洗い出しておくことが重要です。
一般的な財産としては以下のものが挙げられます。
- 預貯金(普通預金、定期預金など)
- 不動産(土地、建物、田、畑、山林、借地権など)
- 株式・投資信託(銀行や証券会社の口座で保有しているものなど)
- 現金、貴金属、自動車、家財道具
- 借金・ローン(消費者金融からの借り入れ、住宅ローンの残債など)
- 未払金(医療費、公共料金、未納の税金など)
- 被相続人の契約関係(連帯保証、賃貸契約、公共料金や電話などの利用契約)
最近ではネット銀行や電子マネー、仮想通貨などのデジタル遺産が増えており、通帳がないために見落としてしまうケースが増えています。
借金などの負債についても、督促状が届いていないか、信用情報機関への照会が必要かなどの慎重な確認が求められます。
④相続方法の決定(3か月以内)
相続財産の調査ができたら、次に、相続をどのように行うかを決めなければなりません。
これには、「原則、被相続人が亡くなったことを知ったときから3か月以内」という期限があります。
相続には次の3つの選択肢があります。
方法 | 内容 |
|---|---|
単純承認 | すべての財産(プラスもマイナスも)を引き継ぐ方法です。特段の手続をしなければ、これを選んだとみなされます。 |
相続放棄 | 借金などの負債が多く、一切の財産を引き継ぎたくない場合に行う手続です。期限内に家庭裁判所への申立手続をする必要があります。 |
限定承認 | プラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を清算し、余れば相続する方法です。期限内に相続人全員で申立手続をする必要があります。 |
期限内に相続放棄や限定承認の手続をしなかった場合は、自動的に単純承認とみなされます。
後から多額の借金が発覚しても放棄できなくなる可能性があるため、注意してください。
⑤遺産分割協議
遺言書がなく、相続人が複数いる場合は、「誰が、どの財産を、どのような割合で相続するか」を話し合います。 これを遺産分割協議と呼びます。
この協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。
一人でも反対したり、連絡が取れない人がいたりすると、手続は停滞してしまいます。
話し合いがまとまったら、後々のトラブルを防ぐため、相続手続に使用するために遺産分割協議書を作成し、相続人全員の実印を押印して、印鑑登録証明書とあわせて保管しておきます。
⑥名義変更・解約換金などの手続
遺産分割協議が調ったら、財産の名義変更や預貯金などの解約換金手続に移ります。
それぞれの財産によって窓口が異なり、以下のようになります。
- 預貯金の解約・払い戻し:銀行などの金融機関
- 不動産の相続登記:法務局(自宅や土地の名義を書き換える手続)
- 株式や投資信託の名義変更:証券会社や銀行などの金融機関
- 自動車の名義変更:運輸支局
特に不動産の相続登記については、2024年4月から義務化されており、正当な理由なく放置すると過料(罰金)の対象となる可能性があります。
速やかに行うようにしましょう。
⑦相続税の申告・納付(10か月以内)
すべての財産の合計額が一定の基準(基礎控除額)を超える場合、税務署に対して相続税の申告と納付を行う必要があります。
この期限は、「原則、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」です。
相続税は現金での一括納付が原則であるため、不動産ばかりで現金が少ない場合は、納税資金の確保のために、相続税の期限である10か月間の間に相続登記をしたうえで不動産を売却するなどの方法についても早めに検討しなければなりません。
期限を過ぎると延滞税などのペナルティが課されるため、注意が必要です。
まとめ
今回解説したとおり、相続手続には、以下のような注意すべき点があります。
- 法的に定められた期限がある
- 収集したり作成したりすべき書類が多く、複雑である
- 法律や税金に関する専門知識が求められる
- 財産に関わる話を相続人とする必要がある
そのため、放置したり、知識なしに対応すると大きなトラブルに発展してしまうこともあります。
相続手続を自力で行うことに負担を感じた際には、司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。
専門家は、複雑な相続手続をスムーズに代行し、法律に基づいて公平なアドバイスを提供します。
専門家の力を借りることで、手続の漏れやミスを防ぎ、相続を円滑に進めることができるでしょう。












