任意後見人を選ぶときのチェックポイント! 後見人になれる者・なれない者、適性のある者とは
成年後見制度を利用することで、法律行為の代理など法的なサポートを受けられるようになります。このうち任意後見制度では本人が信頼する方を任意後見人として選任することができるのですが、任意後見人は重要な役割を担うため、慎重に選任を行う必要があります。
そこで当記事では、まずどんな方が後見人になれるのか、そしてどんな方を選ぶべきなのか、選任にあたってのチェックポイントを紹介していきます。
好きな人物を任意後見人に選任できる
任意後見制度によりサポートをして欲しい方は、自由に、好きな人物を任意後見人として選ぶことができます。
法定後見制度の場合も候補者を挙げることはできますが、その時点で本人に判断能力が残っておらず自らの意思で選ぶことができない可能性もあります。
また、候補として挙げた人物が選ばれない可能性も十分に考えられます。
一方の任意後見制度では本人と任意後見人候補者が契約を締結することから始まり、委任する仕事内容や任意後見人となる人物まで、基本的には当事者間で自由に定めることができるのです。
法律上の欠格事由に該当する人物以外が候補
基本的には自由に任意後見人を選ぶことができますが、法律で「後見人になれない者」も定められていますので注意が必要です。
法定されている「欠格事由」を以下に整理します。
《 後見人になれない者 》
●未成年者
※18歳未満の者●家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
※前に後見人から解任されたことがある者●破産者
※破産手続開始決定を受けてまだ復権をしていない者
※過去に破産をしているだけで該当するわけではない●本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族
※本人と訴訟トラブルのあった者(強制執行も含む)●行方の知れない者
この規定は任意後見制度・法定後見制度に共通するルールです。
これに加え、任意後見制度においては「任意後見人になろうとする者に関して、不正行為があるなど任意後見人の任務に適さない事由があるとき」は任意後見が始められない可能性が高くなります。このルールも任意後見契約法にて規定されています。
よくある任意後見人の例
上記欠格事由に該当しなければ、広く様々な人物が候補者となります。
よくある任意後見人の例としては次の人物が挙げられます。
家族・親族 | 子どもや兄弟、その他関係性の近い親族が選任されることが多い。支援対象である本人の人となりをよく理解しており、本人としても安心感が得られる。ただし後見人としてのスキルが不十分という問題がある。 |
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専門家 | 司法書士、弁護士、社会福祉士といった法律や福祉の専門家を選任するケースも多い。プロに依頼をするため費用負担が大きくなるという問題があるものの、法律行為や財産管理に関わる能力の面では安心して任せられる。 |
市民後見人 | 成年後見制度に強い実務家が足りていないという現状があるため、後見人としての技能を身に付けるための研修が自治体で実施されている。 この研修を経た市民後見人も活用が進む。 |
なお、任意後見人は1人しか選任できないわけではありません。2人や3人を選んで任意後見人になってもらうことも可能です。
複数人を選任することには「互いの監視機能がはたらくことで適正な後見事務が期待できる」「任意後見人1人に不測の事態が起こっても別の任意後見人が対応できる」といったメリットがあります。
ただし、費用が増してしまうことや、任意後見人同士の意見が合わないことで後見事務がスムーズに進まなくなるおそれがあるといった懸念点もあります。
選任時にチェックしておきたいポイント
誰を任意後見人にしようか迷うこともあるでしょう。そんなときは次に挙げるポイントに着目してみましょう。
資力・経済力が高いこと | 不正のリスクを下げるという観点からは、候補者の資力・経済力が高く、お金に困っていないことが重要といえる。また、任意後見人になった後で破産をしてしまうリスクも小さい。 |
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資産運用等の経歴があること | 大きな資産を持っている、不動産の運用や株式の運用をしている、という経歴は財産管理能力の面における安心材料となる。他方、これまで大きな財産を持ったことのない人物にいきなり大きな財産の管理を任せることになれば経験不足・能力不足によりミスが起こる可能性が高くなる。 |
判断能力の低下や 死亡のリスクが低い年齢であること | 判断能力の低下・喪失への備えとして任意後見制度を利用するのであり、支援対象の本人より候補者の方が認知症や死亡のリスクが高いと問題解決にならない可能性がある。できれば本人より年齢の低いものを選ぶこと、もしくは年齢の概念がない法人を選ぶことも検討する。 |
近くに住所があること | 任意後見人は介護を直接行う人物ではないが、日常生活に係る様々な行為を支援することになるため、できれば近くにいた方がサポートもスムーズになって良い。本人の状況も逐一確認しやすい。 |
親切丁寧で面倒見がいいこと | 能力面も重要であるが、「本人のためになることをしたい」「人助けをしたい」という精神も大事。本人のために必要なことは何か、能動的に考えてくれる方が任意後見人になった方が安心感も得られる。 |
利害が対立する場面に注意
任意後見人は本人を代理する行為も行うため、本人との関係において利害が対立する場面は極力発生しないようにすべきです。
例えば、ある相続において本人と任意後見人が共同相続人になる場合がそうです。このときは特別代理人を置くなどの措置が必要になります。
また、介護関係者を任意後見人とする場合も要注意です。ケアマネージャー等が任意後見人になったとき、当該人物が所属する事業所でサービスを利用することになれば、事業者側に有利な契約を締結することもできてしまいます。事業者との間でトラブルが起こったときの対処においても問題が生じます。
法人を任意後見人にするときも同様の問題が起こりやすいため、特に利害関係には注意しましょう。