相続人に未成年者がいる場合の相続登記手続きについて
相続した財産に不動産が含まれる場合には、相続の登記が必要です。
それは相続人が未成年者であっても同様です。
未成年者の相続登記手続きは、親権者が代理人として関与して行われることが一般的です。
しかし、相続の場面においては、親権者が代理人として関与できない場合もあります。
この記事では、相続人に未成年者がいる場合の相続登記手続きについて解説します。
相続登記とは
相続登記とは、亡くなった人が所有していた不動産の名義を、相続した人に変更する手続きです。
相続登記を行うことで誰がその不動産を所有しているか明確になり、権利を主張できるようになります。
これにより、将来起こり得るトラブルを防ぐことが可能です。
現在、相続登記の申請は義務化されています。
相続によって不動産を取得すると知った日から3年以内に相続登記をしなくてはいけません。
もし、正当な理由なく相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
未成年者であっても相続登記はできるのか
未成年者であっても不動産を相続することができます。
未成年者が不動産を相続する場合、相続登記の名義は、親権者の名義ではなく、未成年者本人の名義となります。
また、未成年者が自ら相続登記の手続きを行うことも可能とされています。
意思能力を有する程度の年齢であれば、未成年者本人が行っても良いでしょう。
しかし実際には、親権者などの法定代理人によって手続きが行われることが一般的です。
相続内容を協議する時には
相続人に未成年者がいる場合、誰が何を相続するのか等の相続内容について相続人同士で協議を行う(これを「遺産分割協議」といいます。)時には注意が必要です。
民法によって、未成年者は、遺産分割協議などの法律行為を行うことが制限されているためです。
そのため、未成年者が遺産分割協議を行うには、親権者などの法定代理人が代わりに遺産分割協議を行う必要があります。
しかしながら、未成年者が相続人となるケースでは、親権者もまた相続人となっていることが多くあります。
たとえば、ある人が亡くなり、その子ども(未成年者)と妻(親権者)が相続人となるケースがその典型例です。
このケースで、親権者が未成年者の代理人を務めてしまうと、一方の相続人である未成年者の意思を、もう一方の相続人である親権者が決定することになってしまいます。
これでは、未成年者の意思に反し、親権者の利益が多くなるように協議を進めてしまうことも可能になってしまい、不公平な結果となる危険性があります。
そのため、未成年者と親権者の利益が対立してしまうようなケースでは、相続人間での公平性が守られるように、親権者の代わりに、未成年者の利益を守る代理人を選任する仕組みが用意されています。
これが特別代理人の制度です。
特別代理人は、家庭裁判所に特別代理人の選任申立の手続きをすることで、利害関係のない人から選任してもらいます。
親戚や友人などに特別代理人になってくれるよう依頼しても良いですが、遺産分割協議という大きな責任を伴う行為をすること、専門的な法律知識が必要になることを踏まえて、司法書士などの専門家に依頼することも可能です。
特別代理人が選任されたら、特別代理人は未成年者の代理人として、他の相続人と一緒に遺産分割協議を行います。
また、特別代理人は、遺産分割協議の結果を踏まえて、未成年者の代わりに相続登記手続きを行うこともできます。
法定相続分や遺言書どおりに相続する時
法定相続分どおり、もしくは遺言書に書いてある内容どおりに相続した場合には、遺産分割協議をする必要がないため、特別代理人を選任する必要もありません。
未成年者が不動産を相続した時には、親権者がそのまま代理人として、相続登記の手続きを行うことができます。
未成年者と親権者が共同でひとつの不動産を相続した場合には、親権者が自身と未成年者の共有名義での相続登記を行うことも可能です。
未成年者の相続登記手続きに必要な書類
未成年者本人が相続登記の手続きを行う場合に、一般的に必要となる書類は次のとおりです。
- 登記申請書
- 相続人全員の戸籍謄本
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本
- 亡くなった方の住民票の除票
- 不動産を相続する人の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
遺言書に書いてある内容どおりに不動産を相続した場合には、遺言書の提出も必要になります。
遺産分割協議によって不動産を相続した場合は、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑登録証明書が必要です。
未成年者の代わりに、特別代理人が遺産分割協議をした時には、特別代理人の選任審判書や印鑑登録証明書も必要になります。
ちなみに、特別代理人の選任審判書は、特別代理人を選任した際に家庭裁判所から交付されます。
また、親権者が法定代理人として相続登記を行う場合、委任状は不要です。
一方で、親権者であることを証明する必要があるため、未成年者と親権者が記載された戸籍謄本が必要となります。
なお、この戸籍謄本は、上述の戸籍謄本と兼用することも可能です。
特別代理人が相続登記を行う場合
特別代理人が相続登記を行う場合も委任状は不要です。
ただし、特別代理人であることを証明するため、上述の選任審判書を提出する必要があります。
司法書士へ依頼する場合
相続登記を司法書士へ依頼する場合には、委任状が必要です。
委任状への署名・捺印は、未成年者本人ではなく、親権者や特別代理人が行っても差支えありません。
まとめ
この記事では、相続人に未成年者がいる場合の相続登記について解説しました。
未成年者であっても不動産を相続することができ、未成年者の名義で相続登記が可能です。
相続登記は義務化されており、3年という期限内に行わなければなりません。
特別代理人の選任申立の手続きや相続登記手続きは、司法書士に依頼することもできますので、手続きが難しいと感じた場合、一人で悩まず、まずは司法書士に相談してみると良いでしょう。